TEORI   bamboo circular economy
竹循環型社会を創る
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JOURNAL
− ジャーナル −

#28
 地域社会人
有限会社くま代表 辻 信行さんへのインタビューvol.3

 
 

 

#倉敷 #人 #シティガイド  
     
  辻さんへのインタビュー、3回目は美観地区の魅力が更に広がるきっかけになった「林源十郎商店」と、宿泊事業を始めることとなった「土屋邸 KURASHIKI」についてのお話を伺いました。  
 
 
林源十郎商店site   土屋邸 KURASHIKI

 
   
  懐かしくて新しい、林源十郎商店  
   
 

開店から4年ごろの店内2Fの様子
テオリ「カタログvol.8」の撮影はこちらをお借りした

 
 

| 林源十郎商店

本町通りの「林源十郎商店」は2012年3月に開業し、現在14年目を迎えました。1657年から薬種業を営む林源十郎商店を、「衣食住」暮らしの豊かさを問いかけるコンセプトで再生した複合商業施設(8店舗)です。所有者の株式会社エバルス(林薬品株式会社とオーク薬品株式会社が合併)と倉敷まちづくり株式会社が連携し、地域のまちづくりの一環として運営しています。
私たち有限会社くまは、(株)暮らしき編集部を立ち上げ、コンセプトデザインやテナント誘致し、現在も企画運営に関わっています。

今から思えば「林源十郎商店」という屋号を残すことが最も重要な仕事だったと思います。当初は違う名前に変更になりそうでしたが、屋号を残すことで地域のストーリーや歴史を語り継ぐことができると説得しました。地名や屋号を捨てるとその土地の本当の姿が見えなくなり、地域の物語性が失われると思ったんですね。

本館の建物は1934年築の木造3階建てで、耐震補強はすべて完了しています。かつては雨漏り対策のため、屋上に屋根がかけられていましたが、再生時に屋根を撤去し元の形に戻しました。ランドマーク的な存在だった本館の屋上は、美観地区の景観を楽しめる場所として活用されています。それは地元住民にとっても、懐かしくて新しい美観地区の眺めになりました。

 
     
  「まちづくりはひと」次世代を思いやる心  
 

また本館2階には、エバルスが設置した林源十郎商店記念室があります。記念室では林家の成り立ちや地域での役割、さらに林源十郎、石井十次、大原孫三郎の3人の出逢いが地域にとって重要な出来事であったことを紹介しています。大原孫三郎は、東京専門学校(後の早稲田大学)在学中に放蕩生活の末、今のお金で数億もの借金を作り、中退させられ父親に連れ戻されたエピソードがあります。

一方、林源十郎は石井十次の岡山孤児院を援助し、共にキリスト教徒として地域貢献活動を行っていました。
孫三郎の将来を考えて父・考四郎は、林家の源十郎に息子を預けました。源十郎は、孫三郎の誕生日に石井十次と引き合わせました。この出逢いをきっかけに、孫三郎は遊び人から心を入れ替え、後にキリスト教徒へ改宗。私財を投じて孤児の救済をする石井十字、それを支援する源十郎、親の金を自分のためだけに使っていた孫三郎はこの時、人生を変えるスイッチが入ったのだと思います。この出逢いを機に、石井十次の慈善活動への支援、さらには自身の事業で得た利益を、文化・教育・医療・研究などに投じました。
これらの支援活動は単発では終わらず、その後になって時代や国が追い付いてきたように、活動の意義は現在まで継続しています。例えば地域での活動が倉敷中央病院や岡山大学農学部の前身となる研究所の設立につながり、今も続く形で残り地域の財産となっています。


こうした人との出会いによって孫三郎のスイッチが入ったことで、地域社会人としての意識が高まり、倉敷のまちづくりが進んで行きました。改めて 「まちづくりは人である」という普遍的な価値観を再認識しました。

本館屋上からのまちなみ、屋号、商業施設に記念館など、林源十郎商店もまた、「本質 ×カワイイ」仕掛けによって「へいのない学校」を展開しています。なかなか誰にも学校とは気づいてもらえないんですが、経験の中で自分の中に何か残ってくれれば良いですね。

 
     
   
 
  「普段着の倉敷」を体感  
   
     
  |土屋邸 KURASHIKI

2022年に開業した「土屋邸」は、明治時代から平成まで土屋内科医院として地域の医療に従事した土屋家の医院・母家・蔵を改修し、町家からの視点で朝夕の美観地区を体感できる宿泊体験を提供しています。土屋邸は旧街道の本町通りと倉敷川河畔の間に位置し、倉敷らしい路地にも面しています。


写真奥が土屋邸
白壁の建物の路地に面している

 

建物の記憶をとどめるため
内科医院時代の看板を残している
母家の北側・南側、蔵の3つの独立した部屋があり、母家の北と南は1階の廊下でつながっています。定員は4名・4名・2名で、廊下の仕切りを外して部屋をつなげることで最大10名まで宿泊可能、ホテルと旅館のいいとこ取りができる設計です。

宿泊業を営む目的は「普段着の倉敷〜暮らしが織り成す、まちの豊かさを伝えること」にあります。日中は、観光客の賑わいに圧倒されますが、朝夕は散歩や駅伝部のランニング、お寺の鐘の音に烏骨鶏の鳴き声、通勤通学と普段着の倉敷の姿があります。宿泊すると、もれなく倉敷の夕暮れ、夜、早朝が体感として付いて来る、実はこれも「へいのない学校」なのです。
土屋邸のチェックインの時間は15時から17時に設定しています。通常のチェックイン時間だと物理的な宿泊は可能ですが、まちが豊かな表情になる夕暮れを体感できません。白壁が赤らみ、瓦の陰影がまちに深みを増します。町家が軒を連ねる本町通りには、マジックアワーが広がります。これがこの界隈の日常であり、普段着の倉敷です。
 
     
  双方向にまちなみ、旅の明かりが暮らしの明かり  
   
  チェックインは、私が行います。どの部屋もまちと繋がった窓があります。そこからの眺めは、まさに倉敷そのものを体感できます。それと同時に、道行く人から見たら室内のペンダントライトの明かりは暮らしそのもの。土屋邸に泊まることで倉敷の暮らしを体感出来ます。窓や格子戸越しに暮らしとまちが繋がる、これが倉敷のまちの美しさです。双方向にどちらも絵になるまちなみです。


土屋邸の窓からつづく
美観地区の景色

 
プライバシーを保ちながら
旅人が倉敷の景色の一部になる
一棟貸しで宿泊人だけが楽しむ宿ではなく、宿泊者がかつての暮らしの明かりを灯しまちなみになる。先人たちが、丁寧に暮らし繋いできたまちが、倉敷美観地区になったような宿泊体験が出来ます。

案内中、まだ宿泊もしていないのに「二泊にしておけばよかった」とか、「うちの父さん、母さんも連れて来たい」という宿泊者の方の声が聞かれます。
これも場が持つ力であり、それを体感するアンテナの感度の豊かさだなと実感しています。



 
  倉敷美観地区は「地域の客間」
 
  そしてもうひとつの目的は、「地域の客間」。
昔の家には客間やお客さん用の布団がありましたが、現代では三世代同居も減り、畳の部屋さえも少なくなっています。しかし、もてなす気持ちが無くなったわけではありません。家族の記念日や懐かしい友人が訪ねて来た時、家の中にない客間を地域の中にシェアする発想です。

倉敷に住む人は、県外から親族や友人が訪ねて来た時には、美観地区を案内します。それは一番地元らしくて誇れる場所だからです。土屋邸を「地域の客間」として、倉敷に住むひとも家族の記念日や懐かしい友人と一緒に泊まり、倉敷美観地区を自分の生活に取り込んで楽しめば暮らしがもっと豊かになると思います。
約48万人の倉敷市民、ほとんどの人が美観地区に宿泊したことがないと思います。三世代の記念日、大切な仲間との再会、晴れの日を「地域の客間」で地元が楽しむ。地元が楽しむ場であることが、観光客にとっても魅力的な場になると考えています。

倉敷美観地区は「地域の客間」という考え方は先日、大原謙一郎さんも共感されていました。

※大原謙一郎氏
先述の大原孫三郎のお孫さんで(株)クラレ副社長、(株)中国銀行副頭取、岡山経済同友会代表幹事、倉敷商工会議所会頭、日本商工会議所政策副委員長などを歴任

どの部屋もテオリの家具を暮らし目線で体感できます。
キッチンカウンター、キッチンスツール、カッティングボード、ナイフスタンド、ZEN、NUTS、HULL、ベッド、スリットスツール、エントレイテーブル、ソファ、リクライニングソファなど、土屋邸は「テオリのある暮らし」が体感できます。



土屋邸の納品事例はこちら

 

土屋邸も元々の建物の良さを残した作り、
倉敷で歴史を刻んだ長屋で過ごすように泊まることができる。



 
 



 
 
| The voice |
 
 
インタビューの生の声を短くまとめました
当日の映像と一緒にお聞きください

 
 
 
  今月のお話は一旦ここまで。

最終回となる次回は水と緑の豊かな酒津で現在(有)くまの本社の「旧原田邸」と「地域社会人」に対する想いを総括して頂きます。

 
 
 

 
 

 

 
 

JOURNAL #29
2026年4
月掲載予定

 
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  #26 2025.12.2 upload   #27 2025.12.2 upload  
     
 

地域社会人
有限会社くま代表
辻 信行さんへのインタビューvol.1

 

地域社会人
有限会社くま代表
辻 信行さんへのインタビューvol.2

 
     
  #倉敷 #人 #シティガイド   #倉敷 #人 #シティガイド