TEORI   bamboo circular economy
竹循環型社会を創る
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JOURNAL
− ジャーナル −

#26
 地域社会人
有限会社くま代表 辻 信行さんへのインタビューvol.1

 
 

 

#倉敷 #人 #シティガイド  
     
 


辻 信行(つじ のぶゆき)さんは、有限会社くまの代表取締役で、倉敷美観地区の三宅商店や林源十郎商店など町家や旧家をリノベーションしたカフェやショップ、菓子工房、宿を運営され、倉敷のまちづくりや地域づくりのキーパーソンです。
現在有限会社くまの本社と菓子工房となっている倉敷市酒津の旧原田邸で、これまでの取り組みやその経緯についてお話を伺いました。

|編者註|
今回のジャーナルは1つのストーリーがいつもに比べて長くなっているのですが、「地域社会人(を育てていきたい)」という意味深い話をなるべくそのままお伝えしたいと思いできるだけカットせずに載せることにしました、ぜひじっくり読んでみてください。


 
 
有限会社くまさんの運営する
「三宅商店カフェ工房」のHP

 
   
  日めくりカレンダー「へいのない学校」  
 

私は20代、教師として国内外の教育現場に携わっていましたが、その後1995年に個人会社くまを設立して、日めくりカレンダー「へいのない学校」を製作しました。
日めくりすれば、どこに住む子も被災した子も同じ一日がやって来ます。カレンダーには、毎日今日の問題が記載されており、学校の教科書には出てこない、子どもたちの興味関心や自らの可能性をくすぐるきっかけになっています。

そして30年かけて取り組んできたのが、「へいのない学校」。
今を生きる私たちが、世代や時代の瞬間的な価値観に振り回されず、本質的な豊かさを取り戻すきっかけづくり、私を含めたひとづくりです。そのきっかけの仕事場は、「テレビ番組」であり、地域の「場づくり」「ものづくり」です。さらに地域を舞台とした「地域社会人」の育成を目指しました。

 
     
   
  地域再発見番組
「おっちゃんの朝からぶらぶら行ってみよう!」
 
 

 

 


それが自ら企画・出演し、倉敷ケーブルテレビに持ち込み制作した「おっちゃんの朝からぶらぶら行ってみよう!」です。
番組では朝の日の出から小学校区を巡り、給食の時間には子どもたちのもとへ行き「こんな話を聞いた」「こんなものづくりがあった」と地域ならではの暮らしやものづくりを伝え、さらに子どもたちの視点で地域の自慢をしてもらい、三世代で地域の魅力を発信する内容となっています。



番組で辻さんが取るポーズを真似する子供たち
倉敷出身者にはとても馴染み有る番組だった

みんなの声や手が届くのは、かつての村の単位である小学校区。県や市のような大きな単位だとなかなか難しい。三世代が地域を自分ゴトとして捉えることが重要であり、一部の人だけのまちづくりではなく、全員が参加したくなるきっかけが求められています。

 
     
   
  「本質×カワイイ」  
  番組では、地域を知り、伝え、誇りを取り戻すきっかけづくりを三世代みんなの自分ゴトにするには、考えました。大切にしましょう、学びましょうと言うのは簡単ですが、なかなかみんなの関心、自分ゴトになりません。

仕掛けたのは「本質×カワイイ」です。カワイイは今や世界共通語で、おしゃれ、美しい、癒される、美味しい、楽しいなど様々です。地域ならでは本質を伝えるには、素の地域住民が登場し、自分ことばで地域や仕事を語る、素の地域を新たな目で見るために、こちらも素で向き合うことにしました。

当時はまだ、ブラ○○リも○○散歩も始まっていませんでしたが、アポイントなしで地域を巡り、何が出て来るかワクワクドキドキの番組が誕生しました。倉敷市、総社市、玉野市などの小学校区、延べ約300校区を歩いた距離は4000キロ以上、12年間放送しました。視聴率は40%を超え、地域が世代を超え広域に自分ゴトになるきっかけとなりました。
 
     
3世代が集う風景と旧原田邸の施設を説明する辻さん
取材の予定時間を大幅に超えることになったが、
最後まで熱量の有る話をして頂いた
     
  地域を朝から巡る中、「昔はこうだった」という話が出てくる度に、各地の歴史、文化、風習が見え、時間の旅を毎回しているようでした。

地名の由来を尋ねると「島」がつくところが多く、昔は海だったという話が出てきます。だから今の山は、地域を歩き回った私には島に見え、山際の道は海岸線なのです。その土地の歴史や由来を知ると、地域への愛着や誇りが生まれ、「誰かに伝えたい」「なんとかしたい」という気持ちが生まれます。これが「自分ゴトスイッチ」、地域社会人のきっかけとなります。

地域をも自分ゴトに、先人を敬い次世代をおせっかいに思いやる心を取り戻すことを時代は求めています。
現代は経済の部分ばかりが強くなってしまい本来の「社会人」としての意味のバランスが崩れ、会社人や特定の考え方に寄り添った○○ファーストという感覚が強くなってしまっています。
「地域社会人」とは、今住む場所だけでなく、先人や次世代、過去や未来、自然環境、狭い世界のウィンウィン以外にも思いを馳せ、利他の心で想像する地域人のことです。

 


今回の取材場所は、有限会社くまさんの本社であり
続編のストーリーでも登場する地域の名家、旧原田邸。

  例えばこの旧原田邸などの歴史的建造物は、どの地域にも存在し地域の誇りでしたが、戦後の農地解放や経済的事情により維持管理が困難になっています。事実9年前に売りに出され取り壊される運命で、これでは地域の宝が次の世代に続いていかないと思い地域社会人として私達で受け継がせて頂くことにしました。
400坪や500坪といった大きな家は現代の生活様式には合わず維持にも大変なお金がかかるため、その多くが処分されてしまっているのが現状です。こうした建物を「その家
(と個人)の問題」として終わらせず、「地域課題」でもなく「地域の宝」として次世代につなぐ必要があります。
さらに大事だと言うだけではなく、経済的自立を伴った場づくりこそが持続可能であり、そのための知恵や工夫、地域社会人の熱量が求められています。

このあとは伝える、つなぐ具体的な場として、実際に経済的に自立している五つの仕事場「地域の宝」を紹介します。
 



取材当時はあたたかな季節
地域の庭職人さんに手入れしてもらっている景色が美しい

写真でもわかるように、旧家の建物・調度と
北欧家具、テオリの家具を品よくまとめられている


 

 
 
| The voice |
 
 
辻さんの人となりを感じて頂きたいので
インタビューの生の声を短くまとめました
当日の映像と一緒にお聞きください
 
 

 
 


冒頭にもお伝えしたのですが今回2回分のジャーナルのつもりで取材したのですが、倉敷のため誠実・真摯に考え続けられたお話が、カットするには勿体ない内容でした。編者には辻さんの地域社会人としての行動が、倉敷の地域の歴史の流れを時代へと繋いでいくという形で現れていると感じられました。
1人の方へのインタビューとしてはすこし多くなってしまうので編集についてとても悩んだのですが、予定を変えて4話に分けてお伝えすることにしました。
ここで一度休憩を入れてvol.2からは「つなぐ場」をどのように作られているか、活動の実例をお伝えします。


 
 
 

 
         
#27 2025.12.5 upload

地域社会人 vol.2
有限会社くま代表
辻 信行さんへのインタビュー
vol.2

#倉敷 #対談 #シティガイド
 

 

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